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『閲微草堂筆記』

中国怪異譚閲微草堂筆記 上 (1) (平凡社ライブラリー き 9-1)中国怪異譚閲微草堂筆記 上 (1) (平凡社ライブラリー き 9-1)
(2008/05)
紀 イン

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最近,前野直彬氏の訳になる『閲微草堂筆記』が文庫本で出版された。もともと平凡社の『中国古典文学大系』に収録されたものを,上下2冊に分冊刊行したものである。ちなみに完訳ではないので注意を要する。

著者・紀は,清朝中期の大学者なのだが,『閲微草堂筆記』には難しい話しは出て来ない。狐に化かされたり,幽霊が出たりと,怪異ものの範疇に入る話しが大半をしめており,まれにお涙頂戴的な逸話が紹介される。(冒頭の幾条かは堅い話だが,これは飛ばしても差し支えない)

この『閲微草堂筆記』,確かに本筋の随筆そのものも面白いのだが,実は一番人の関心を引くのは,随筆各話につけられた紀の評語(コメント)の方である。すがに『四庫提要』をまとめあげた紀だけのことはあり,洞察眼や表現力は天下一品といったところだ。ちょうどAmazonの商品紹介より,ユーザーの評価覧の方が面白いのと同じようなものだ。

なににせよ気楽に読める本だから,むかしの怪異物や神霊物を読みたければ,やや値は張るが,買って損はない。なにかの参考に使うというなら,そういう使い方もできないではない。現代の日本人にそれほど知られた本ではないから。ただネタ本として使うには,少し真面目すぎる嫌いはある。

ちなみに『閲微草堂筆記』の全訳はいまだ存在しない。訳本では,前野氏のものの他,同じ平凡社から出版された中国古典文学全集(20巻)に収められた『閲微草堂筆記』(訳者失念)もある。たしか前野氏は文学全集本とだぶらないように翻訳されていたと記憶するので,両者を手に入れたなら,より多くの随筆に触れられるわけである。ただ原文はかなりの大部なので,なかなか全訳とはいかないだろう。それにさしもの紀も,量が増えるに従い,つまらない話しを多くするので,前半部分を読むだけでいい……とまではいわないが,出色の作品は前半に多い。


私にとって『閲微草堂筆記』は思い出の多い本である。傾向的に私の好きな話しが多いせいだろうが,本書(前野氏の訳本)を読んで感動を覚えた話しはいくつもある。参考までにそのなかの一つをあげておく。(翻訳には自身がないし,前野氏のを写すわけにもいかないから,書き下しで。これは前野氏訳本の上冊にある)

又,余が家を去ること三四十里,その僕の夫婦を凌虐して死(ころ)し,しかもその女(むすめ)を納むる(=嫁にする)ものあり。女 もとより慧黠なれば,その〔夫の〕飲食服用を経営し,事ごとに意に当たる。又,およそその〔夫の〕歓を博すべきものあれば,冶蕩狎媟し,至らざるところなし。〔村のものは〕みな窃かにその仇を忘れたるを議す。

〔女の〕蠱惑すでに深く,ただその言のみこれ聴かる。女 始めは則ちこれ(=夫)を奢華に導き,その産(=家産)の十の七八を破る。又,その骨肉を譖間し,〔夫の一族〕内を以て寇讐の如く門(へだ)てしむ。継いで乃ち時どきに『水滸伝』の宋江・柴進などのことを〔夫に〕説き,称して英雄と為し,之(=夫)を聳恿し盗賊に交通せしめ,遂に〔夫は〕人を殺すをもって法に抵る。法に抵るるの日,女 その夫に哭さず,陰かに巵酒を携えその父母の墓に酬して曰く,「父母 つねに夢の中にて我を魘(うな)す。意 恨恨として我を撃たんと欲するに似たり。今,これを知るや否や?」

人 始めてその〔女の〕報復を志すを知りて曰く,「この女の為すところ,ただ人の測らざるのみならず,鬼もまた測らざるなり。機 深からんや。」然りして陰険をもって論ぜず。『春秋』は心に原(たず)ぬ。もとより共に天を戴かざるものなり。



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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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