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陽明後学文献叢書

今年の夏前だったと思うが,『陽明後学文献叢書』という叢書が出版された。内容は叢書名のとおり,陽明学者(王門)の著作を校点出版したものである。各冊,対象人物の略歴と思想概要,テキスト選定の理由などが,校点者によって冒頭に記されてある。念のため書いておくと,縦書き繁体字である。

収録内容は以下の通り:
○徐愛、銭徳洪、董澐合集
○鄒守益集(上下)
○欧陽徳集
○王畿集
○聶豹集
○羅洪先集(上下)
○羅汝芳集(上下)

ソースを忘れたので断言できないが,当初の計画では王艮と周海門が含まれていたらしいが,なぜか消えてしまった。もしかすると第二輯でも出すつもりかもしれない。

内容から言うと,いきなり開いたページに句読のミスがあったのでぎょっとしてしたが,全体的には昨今の校点本と変わりはない。とはいえ,ややチェックが甘いような気のするところもあった。

例えば,『欧陽徳集』の参考文献に『四庫提要』が挙がっているが,『提要』の「欧陽南野集三十巻」の最後に,間違って「南野文選四巻」の文章が混ざっており,その直後に再び表題を加えて「南野文選四巻」の『提要』が来るという次第である。(859ページ)

その他,校点者によって,やや句読に癖のあるような気はするが,これは個人の感覚によるものだろう。

王門は『明儒学案』のおかげで有名なのだが,遺憾なことに彼等の著作を読もうと思ってもなかなか難しい。理由は二つあって,一つは当時の口語的表現を用いている場合があって,ニュアンスが掴みにくいこと。ただこれは一流の学者なら読めるので,読めないと言うのは,単なる勉強不足によるものらしい。でも二つ目の理由は深刻で,王門の著作は簡単に見られないのである。

見られないというのは,本が出回っていないからである。明代の書物は日本にもそれなりに残っていて,王門の著作もそれなりに多い。では日本にあるわけだから,日本人なら簡単に見られるのかというと,そういうわけにはいかない。東京近辺か京都在住ならいざ知らず,それ以外の田舎者は,わざわざ必要かどうかも分らない本を見に,何万をつかって都まで出て行く必要がある。稀覯本指定されている場合は,紹介状が必要だったりして,もっと大変になる。時間的にも先立つもの的にも余裕があれば別だが,そうでもない限りわざわざ見に行こうとは思わない。

とはいえ日本在住の本はともかく,中国のものとなるともっと見るのは難しい。最近は『四庫全書存目叢書』とか,『続修四庫全書』とか,大規模な叢書が編纂され,王門の著作もかなり収録されたが,それでも中国に存在する(らしい)王門の著作はまだまだあるのである。

本叢書に収められたのは,いずれも王守仁の高弟の著作であるから,それらの著作が比較的安価に手に入るならば,それはそれで喜びたいところである。もちろん研究するには,版本の問題等々のことも考える必要はあるが,本叢書のテキストが間違いだらけというならともかく,それほどでもないのだから,意固地になって批判する必要もない。

できることなら第二輯,第三輯と出版してもらって,陽明後学の著作の閲覧を容易ならしめてもらいたいものである。特に中国にしかなく,しかも版本が複数ある場合は,それらを集めて校勘してあるだけでも,大いに助かるわけである。

もっとも,王門の著作だからといって,それらを全て読む必要があるのかというと,これは別の問題である。何事によらず,本筋をしっかり抑えてから枝葉末節に及ぶもので,王門無名人の著作ばかりを探し回って,本筋をなおざりにすると,本末転倒の謗を受けることになってしまう。ただ珍しいものは一度見てみたいという気持ちも,なかなか消しがたいのではあるが。


追記(2008/11/13):
この前,部屋を整理していたら,ここで書いた『陽明後学文献叢書』の編集者の一人が叢書の構想について書いたサイトのコピーが出てきた。(ややこしい書き方でごめんね)

もとのサイトはページが見あたらないので,流れていったか削除されたのだろう。どっかの専門誌のPDFかなにかだったと思う。著者は分かっているが,迷惑がかかるといけないから,これは敢えて書かないでおきたい。

それによると同叢書既刊分の外,『王艮・王襞・王棟集』,『薛侃集』,『周汝登集』の3つがあがっている。ただ後二者は編者が「待定」なので,当初からメドがたっていなかったのかもしれない。ただ同叢書に『王艮』が抜けたのは,思想家としての価値はともかく,やはり叢書としてのまとまりに欠けるものがあったのは否めないだろうとは,今でも思っている。

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