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四庫提要(春秋類2)終わり

ようやく春秋類2が終わった。春秋類1は三伝注疏を省いたので短かったが,春秋類2は省略しなかったので時間がかかった。

次回からは春秋類3。時期的には元朝から明朝だが,春秋類2の最後の2つ――家鉉翁と陳深は実質的に元朝だから,春秋類2と3にほとんど区別はない。

四庫官の立場をあらかじめ言っておくと,元以前の春秋著作は来歴の古さから原則として四庫全書に収録し,明のものは大幅に省略し,清のものは適宜収録するということになっている。四庫全書の正目と存目の両者をつなぎ合わせ,時代ごとに分類すると,明にも宋・元・清に匹敵するだけの著述のあったことが分かる。

ただ,四庫官の肩を持つわけではないが,明の著述は,正目のものを含め,見るべきものがほとんどない。せいぜい『春秋大全』に触れる必要のある程度で,それ以外は宋元時代の春秋学の亜流の亜流程度のできなので,見なくてよい。その『春秋大全』にして,既に評価すべき点は著作の内容ではなく,単に有名だからというに止まるのである。

よく清の人が「明の春秋学は歴代王朝最低だ」というようなことを言うが,全くその通りだとしか言いようがない。私など,経学史の著述で,明の著作に対して他の時代と同程度の紙数をさいているのを見ると,却って見識のない本だと思うくらいだ。もちろん,歴代の経学著作を説明する必要上,一応は明の駄作も説明しておかなければならない,換言すれば,研究の空白を作るべきではないという義務感から研究する場合がある。これはやむを得ぬ事情でもあり,大いに理解できるが,その場合でも,明の説明は必要最低限度に止めるべきであり,貴重な紙数を明に浪費してはならない。

現在,まれに明の経学を褒める研究者がいる。この手の人間は,大抵,明が好きな人々なのだが,申し訳ないが個人的な好みで価値を判断されては困る。別段明が好きでもかまわないが(私は憎いが),それは個人の好みであって,他者に強要すべきものではない。

私などは劉敞の春秋研究を好んでいるくちだが,それはあくまでも私の個人的な好みの問題だ。学説史的に説明するなら,劉敞の春秋学は,当時にあって方法論的になんら新味はなく,むしろ陸淳等の焼き直しに過ぎない。もちろん個々の発言には鋭いものが多いとはいえ,これも敢えて劉敞でなければならないものではない。元の呉澄ではないが,時代的好みから言えば,劉敞の選択眼には往々にして過失(荒さ)があるのである。つまり劉敞は,大きくは主流的立場におりながら,より細かく見るならば,主流の傍系にいたのである。

もちろん,私が好きなのはその主流の傍系というところである。それは私の生活の一部であり,私の思考の一部でもあるが,あくまでも私が私個人の脳内で考えているだけのことで,それをもって学史的に無理矢理劉敞に価値を付与することはできない。公然と劉敞に価値を付与できるとすれば,それは春秋学の歴史に対してではなく,超歴史的なものとして,劉敞という人間(正確には劉敞の著作)に対して意味を与える場合である。この場合,劉敞はもはや宋代の人である必要はない。どの時代の人間であろうと問題ではない,問題なのは,劉敞と人間という関係だけである。

閑話休題。本当に明の経学に価値があると思っている人間はいる。しかしその場合,どの点が他の時代と比べて価値があるのか,換言すれば,他の時代のもっと優れた著作と代替可能ではないことを説明してもらいたい。正義とか宋の経解でこと足りるなら,敢えて粗悪な明の経解を利用する必要はない。

中国の全ての王朝に経学が盛んでなければならない理由があるわけでもあるまいに,ことさら明朝に春秋学の価値を認める必要は全くない。唐の中葉に発端を得た春秋の新潮流は,宋代で華開き,元朝にその亜流を見,そして明の最初期で終わったのである。その後,200年あまり暗黒の時代が続き,いや,暗黒の時代が続いたからこそ,次の時代には全く新しい気持ちで研究できたのだ。

先行研究の蓄積には善悪二面がある。蓄積があればこそ,詳細に研究できるが,蓄積があればこそ,研究視角が制約されるのである。先行研究の視角を批判的に克服するという,時間の手間をかけさせられるのである。清に斬新な研究が生まれた理由の一つに,明という無価値な時代があったことが――消極的な理由ではあるが――認められる。


とまあ,それはどうでもいいが,明朝の春秋学は価値がないということだけ言いたかったのである。次回からは春秋類3。はじめは兪皐の『釋義大成』。

そうそう,なぜ明の春秋学がダメかというと,宋元の春秋の焼き直しだから。宋元でやり尽くされたことを,数百年後にもう一度研究されてもねぇ。真面目だとは思うが,真面目なだけで歴史的に評価されると思うのは余りに甘い。

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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