国家社会主義原理
考えてみたら,国家社会主義(日本の)をまともに理論化した人間の名前が出てこない。高畠素之は国家社会主義を提唱したものの,理論とか原理とかいう方面は杜撰だった。ただその生き様すべてが国家社会主義者だったということで,国家社会主義そのもののような人間ではあるが,まとまった著作は存在しない。せいぜい『批判マルクス主義』か「急進愛国主義の理論的根拠」くらいだろう。
高畠さんの弟子の石川準十郎には『マルクス社会主義から国家社会主義へ』と,敗戦後に著した2つの著書があるにはあるが,その実,国家社会主義そのものに対する論及は手薄である。後で書く後で書くといって,結局まとまった形で公にしたことはなかった。恐らく準備はしてあったのだろうから,それが公開されなかったのは遺憾である。その他,高畠さんのお弟子さんたちにもいくつか著作はあるが,時事問題を扱ったものが多く,国家社会主義の理論や原理とは異なる。
もう一つ赤松克麿や国家社会主義政党の綱領があるが,これは言うまでもなく役に立たない。国家社会主義の一人に目される北一輝は,彼じしんが国家社会主義そのものを罵倒するように,国家社会主義そのものの理論や原理を説いたものはない。その他,新官僚は論外。
で,その意味では林癸未夫氏の『国家社会主義原理』は確かに珍しい。戦前にあってこの本がどれほど捌けたのか不明だが,古本屋では結構な値段で売られる場合が多い。実際に本を開いてみると,それほど価値のある本とは思えないが,確かに珍しい種類のものだけにその手の人間には興味を引かれる本ではある。ということで,特に意味もないが,その目次でも挙げておきたい。
本書の目的は「吾々の信奉する国家社会主義は勿論そんなものではない。それは一口に言へば国家主義と名づくべき国民道徳の原理によつて指導され、綜合弁證法と名づくべき社会哲学によつて基礎づけられるところの超階級的国民的社会主義の謂である」ところの,国家社会主義を解説することにある。
もっとも,なにが「国家主義」で,なにが「綜合弁證法」であるのかは,本書の論述だけでは判然としない嫌いはある。そんなものが証明され且つ実現されておれば,いまごろ日本には国家社会主義が隆盛しているはずだから,あり体に言えば,林癸未夫氏の国家社会主義理論は画餅だったのだろう。あらゆる政治理論がそうであるように。
(追記:2009/04/25)
林癸未夫『国家社会主義原理』(章華社,昭和七年五月,同六月訂正再版)
高畠さんの弟子の石川準十郎には『マルクス社会主義から国家社会主義へ』と,敗戦後に著した2つの著書があるにはあるが,その実,国家社会主義そのものに対する論及は手薄である。後で書く後で書くといって,結局まとまった形で公にしたことはなかった。恐らく準備はしてあったのだろうから,それが公開されなかったのは遺憾である。その他,高畠さんのお弟子さんたちにもいくつか著作はあるが,時事問題を扱ったものが多く,国家社会主義の理論や原理とは異なる。
もう一つ赤松克麿や国家社会主義政党の綱領があるが,これは言うまでもなく役に立たない。国家社会主義の一人に目される北一輝は,彼じしんが国家社会主義そのものを罵倒するように,国家社会主義そのものの理論や原理を説いたものはない。その他,新官僚は論外。
で,その意味では林癸未夫氏の『国家社会主義原理』は確かに珍しい。戦前にあってこの本がどれほど捌けたのか不明だが,古本屋では結構な値段で売られる場合が多い。実際に本を開いてみると,それほど価値のある本とは思えないが,確かに珍しい種類のものだけにその手の人間には興味を引かれる本ではある。ということで,特に意味もないが,その目次でも挙げておきたい。
緒論
第一章 国家
一 社会
二 本然社会と派生社会
三 社会と個人
四 国家の本質
五 国家と帝国
六 一元的国家論
七 多元的国家論
八 階級国家論
九 国家と統治者
十 国家の理想
十一 国家主義と国民主義
第二章 資本主義と階級
一 階級の本質
二 資本主義の本質
三 資本家と企業家と労働者
四 有産階級と無産階級
五 国家と資本主義
六 国家と階級闘争
第三章 国家社会主義
一 国家社会主義の本質
二 国家社会主義の内容
三 国家社会主義と革命
四 国家社会主義と社会政策
五 国家社会主義と国民社会主義
六 国家社会主義と共産主義及社会民主々義
七 国家社会主義とファッシズム
第四章 国家社会主義と弁證法
一 弁證法
二 唯物論
三 唯物弁證法
四 唯物史観
五 資本主義から社会主義へ
六 社会の弁證法的発展
七 観念弁證法批判
八 唯物史観批判
九 綜合弁證法
十 弁證法的発展としての国家社会主義
結語
本書の目的は「吾々の信奉する国家社会主義は勿論そんなものではない。それは一口に言へば国家主義と名づくべき国民道徳の原理によつて指導され、綜合弁證法と名づくべき社会哲学によつて基礎づけられるところの超階級的国民的社会主義の謂である」ところの,国家社会主義を解説することにある。
もっとも,なにが「国家主義」で,なにが「綜合弁證法」であるのかは,本書の論述だけでは判然としない嫌いはある。そんなものが証明され且つ実現されておれば,いまごろ日本には国家社会主義が隆盛しているはずだから,あり体に言えば,林癸未夫氏の国家社会主義理論は画餅だったのだろう。あらゆる政治理論がそうであるように。
(追記:2009/04/25)
林癸未夫『国家社会主義原理』(章華社,昭和七年五月,同六月訂正再版)
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