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『素晴らしい新世界ふたたび(素晴らしい新世界再訪)』

素晴らしい新世界ふたたび素晴らしい新世界ふたたび
(2009/04)
オールダス ハックレー

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オールダス・ハックスレーの『すばらしい新世界』をご存じの人は多いと思うが,彼はその30年後に『素晴らしい新世界再訪(素晴らしい新世界再訪記)』を書いた。中学生の頃だっただろうか,ちょっと『素晴らしい新世界』に関心をもった私は,この『再訪記』も読みたいと思いつつ,訳本がなかったので読まず終いだった。英語なんだから原書で読めよと言われそうだが,原書で読もうと思うほどには興味を持っていなかったのだろう。(訂正:2009/05/12:『文明の危機―すばらしい新世界再訪』が発売されていたらしい。近くの本屋にも図書館にもなかったから,訳本がなかったと思い込んでいたらしい。まあ当時のことだからね)

で,GWのちょっと前になぜかそれを思い出し,ネットでちょこちょこ調べてみたところ,上の本,『素晴らしい新世界ふたたび』というのが出版されていた。通常の書名と異なるので少し分かり難いが,件の『再訪』と同じ本である。訳者は高橋衞右氏で,高校の教師をしていたそうである(訳者プロフィールによる)。訳者がなぜ本書を訳出しようとしたのか,あとがきにはなにも書かれていなかったが,おかげで私の大昔の念願を達成することができたのだから,理由はともかく,訳者には感謝したい。

内容の紹介は営業妨害になるのでしない。ただ『再訪』は評論集であって,小説ではない。『素晴らしい新世界』に登場した人間が活躍するわけでも,その世界の裏設定を細かく説明するわけでもない(当たり前だが)。要するに,『素晴らしい新世界』で描いた世界が,著者の予想を超えて現実化しそうなので,その処方箋を書こうとしたもののようである。

この手の評論集は時代が経つとどうしても色あせてしまう。専門家(特に歴史家)の目から見ればいろいろな評価もあり得るだろうが,無関係の単なる好事家からすれば,すでにハクスレーの感じた諸々の問題は既に過去のものである。ハクスレーの力説する「人口過剰」にしても,それがハクスレーの主張する管理社会に繋がるようなものとも思えない。その他,ハクスレーは自由主義の崩壊を憂えているが,その根拠はナチスや共産主義国家である。既に考察の対象が過去のものなのである。

それとハクスレーには申し訳ないが,私はハクスレーの信じて止まない自由主義が嫌いだ。彼は実に自由主義者らしく,自由主義そのものには懐疑的でないらしい。私は自由主義に懐疑的どころか,否定的ですらある。もちろん私は自由主義に強い魅力を感じている。しかし自由主義は結局のところ一つの虚偽だと思っている。

だからハクスレーが自由主義を尺度に道徳や社会(私は社会という言葉すら使いたくないほど嫌いだ)を云々しても,私にはピンぼけして見える。これは好みの問題だから,どうこう言うつもりはないが,自由主義ありきで話しを進めるものだから,それにコミットできない人間には,頗る退屈だった。

むかし興味を持っていた本がこんな調子だったので,ちょっと残念な結果に終わってしまったが,しかしそんなものだろう。結果はどうあろうと,どんな内容かが分かっただけでも大きい収穫だった。先にも書いたが,訳者には感謝に堪えない。

ちなみに私は『素晴らしい新世界』を読んで,額面通り「素晴らしい世界」だと思った。ハクスリーには悪いが,私は困難に打ち勝って自由を勝ち取ることに価値を感じない。何の苦痛をも感じず,悦楽をのみ抱いて生きていける世界。私には「素晴らしい世界」にしか見えない。

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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