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谷真潮の伝記

(追記:2010/02/06)
南学・秦山・崎門関係の記事はサイトの方に改訂整理しました。以下は拍手をいただいた記念に残しておきますが、間違いは訂正していません。
(以上、追記終わり)

谷真潮の手頃な伝記がないので,『日本教育史資料』五(旧高知県)の伝記を挙げてみたい。これは1890-1892年に文部省総務局が編纂したもので,各伝記の執筆者は明記されていない。随って117年前の成立の本書は著作権が切れている(なにか問題があればすぐ削除しますのでご連絡ください)。

☆原文旧漢字。一部送り仮名を増補す。丸括弧内は原注。

谷真潮。初めの名は挙準,通称は丹内。北渓と号す。垣守の長子。少より慷慨にして世の風俗頽廃を嘆き,之を匡済するの志有り。数々上書して政事の得失を論ず。初めて教授役と為り(宮地春樹・戸部良煕と同時に之に任ず。是れ本藩教授役を置くの始めなり),転じて浦奉行と為り,禄百五十石を賜ふ。真潮,頴敏にして果断,最も政に従ふに長ず。安芸郡室戸港は元と野中良継の開鑿する所なり。而るに港口中岩と云う有り,頗る船舶の出入を碍く。真潮,浦奉行たるに及び,之を藩主に稟し,役を興して之を除き去る。藩主其の功を賞し,白銀若干を賜ふ。職に在ること数年,病を以て辞して罷む。

天明七年,藩主山内豊雍大いに国政を改革し,群才を登用し,百度を一新す。真潮を擢んでて郡奉行兼普請奉行と為し,物頭格に進め,官禄五十石を加給す。尋で大目付役と為り,前に給する所の官禄を以て世禄に併せ,別に官禄五十石を給す。真潮,辞するに年老多病,且つ性素と麁暴にして重任に堪へざるを以てす。藩主許さず,優旨慰藉して勉めて事を執らしむ。而して藩制未だ曾て儒者を以て枢要の職に充つるの例有らず。是を以て譏制百出,或は戯書して真潮の門扉に貼するに至る。真潮之を見て和歌一首を作り,亦其の側に貼して曰く,「言はば言へ,言ふ甲斐も無き,老の身の,言はるるも亦,老の華かな」と。此の時に当たり,藩主精を励まし治を図り,言路を開き,費用を省き,信賞必罰,恩威並び行はれ,上下相和し,以て中興の偉業を致す者,真潮の力居多なりと云ふ。既にして藩主卒す。真潮も亦尋で病を謝して職を辞す。乃復た教授役と為る。

真潮の学,洛閩を本とし,雑るに諸家の説を以てし,兼ねて意を韜に用ひ,尤も孫子を好み,神道も亦家伝に依らず,自ら一家の風を成す。故を以て父垣守と合はず,垣守嘆じて我家悪魔を生ずと言ふに至る。而して遂に亦之を禁ずること能はず,乃ち曰く「汝が所見も亦善し。然れども我家伝の書は汝善く之を蔵して散佚せしむること勿かれ」と。吉本虫雄晩に真潮を評して曰く「初め吾れ北渓を以て其の父に及ばずと為す。今にして之を思ふに,某人物父に過ぐること数等。吾輩梯するも能く及ぶ所に非ず」と。世人称して谷氏の三丹と曰ふ(祖丹三郎,父丹四郎,丹内を加へて三と為す)。

其の憲台に在るや,吾川郡柚の木村僧頓蔵主と云ふ者あり。私に歓化して一寺を剏建せんと欲す。村長之を拒み,其の事成らず。僧怒り,直に村長の宅に詣り,刀を抜き之を脅かす。村長即ち之を訴ふ。監司召して訊ふ。僧肯えて服せず,詞鋒太だ鋭し。吏之を奈何ともすること能はず。真潮乃ち自ら之を諭す。僧仍固く執りて服せず。真潮問ふて曰く,「汝,寺を剏めんと欲す。抑々何の為めぞ。」僧対て曰く,「寺を建れば,其の功徳無量却なり。」真潮笑ひて曰く,「汝が称する所の語は,元と梁の武帝の語なり。爾時汝が祖達磨は却て之を無功徳と曰ひしならずや。今汝自家の事だも知ること能はず。偏に己を是とするは,愚に非ずして何ぞと。」僧対ふること能はず。真潮又声を励まして曰く,「汝は是れ臨済派の所謂繋驢橛と云ふ者なり。汝蓋し之を知らず。我今汝をして之を聞かしめん。汝強ひて物欲を去り,道の為に身命を惜しまざらんことを欲して,反て非道に陥るを知らざるは,猶彼の驢の強ひて繋を脱せんと欲して,数々橛を廻り,愈絆縄を纏ふが如し。汝且少しく汝が禅心に反りて之を省みよ」と。僧此に於いて大いに屈し,遂に其の罪に伏す。是れ細事と雖も亦以て真潮の才学を観るべし。

寛政八年,藩主特に禄五十石を加賜す。翌年十月十八日,病みて没す。年七十一。三子あり。皆夭す。弟好井(万六と称す)を養ひて家を嗣がしむ。著す所,『神道本論』『論聖』『論仏』『旧事記偽撰考』『御国の学び』『孫子秘解』『北渓雑集』『北渓文集』『案内独見書辨』『流沢遺事』等あり。

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