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法術先生の生兵法

ここ10日の間、時間の隙間を見つけて本田済訳の『韓非子』 (ちくま学芸文庫)を読んでいた。原文で読めと言われそうだが、私の数少ないお気に入りなので、こればかりは不平不満なく楽しく読める。『韓非子』は私の高校時代のバイブルで、当時よく読んでいた。いまでも枕元に置いている。もちろん本田氏の訳本だ。

『韓非子』の何が面白いかといえば、それは決まっている。人の欺し方、人の陥れ方がこれでもかと言わんばかりに載っていることだ。人間って奴はこういうことをする、だからこうやって嘘を見破れ!権力者ってのはこんなことを考えるもんだ、だからああやって本心を見抜け!弱い連中はたいがいやましいことを考えている、だからそらこうすれば裏をかける!

そしてこれの裏を返して、『韓非子』には、こうやれば人はだませる、ああやれば人は簡単に罠にはまる、あんなことでこんなことができる等々、そういう素敵な話しが満載なのだ。こういうと人間性を疑われるが、私は子供の頃からそういう人の嘘を見破り、人をだます方法がわんさか書かれた『韓非子』が大好きだった。この『韓非子』に唯一欠点があるとすれば、面白すぎてすぐ読み終わってしまうことくらいだった。

しかし『韓非子』も最近の出土資料や研究の積み重ねによって、いろいろ解釈が変わってきている。ややもすれば異質的な扱いをされた「解老」「喩老」(両方とも『老子』の解釈めいたもの)が、実は韓非の法家思想の重要な支柱ではないかとかなんとか。しかし悪いが私はそういうアカデミックな話しに興味はない。韓非さんがどう考えていたか知らないが、あの『韓非子』を読んで感じるのは、権謀術数の楽しさであり、そしてその無謀さだ。

もし『韓非子』を読んで、今の人間社会に役立てられると思う人がいれば――もちろん自分の気に入ったところだけ読むというのではないくてだが――、その人は考え直した方が良い。『韓非子』を実践して得られるものは、失敗だけだ。『韓非子』の権謀術数が生きるのは、全てが現状維持しているときだけだ。

自勢力も他勢力も同じ。技術も国力も根本的に変化しない。こんな条件なら、思い通り操れる部下を持った君主が成功する。全てが同じ(変化しない)ところでは、することも、できることも、みな最初から決まっているからだ。かつて経験したことしか起こらない世界で成功を収める方法は、かつての成功例を完全に実施することだからだ。しかし抜本的に敵味方とも変化する「本当の世の中」で『韓非子』を実践すればどうなるか。相対的に自勢力が老衰して、ついには死滅するだろう。

でも大丈夫。『韓非子』の描く君主には誰もなれないから。かの君主は生ける屍か、さもなくば5000年まっても現れない大聖人だ。いや、そこまで行かなくとも、『韓非子』に出て来る権謀術数の手練れは、知恵あり能力あり勇気あり決断力あるところの、優れた人間なのだ。自分が優れた人間だと自負できない人間に、『韓非子』は御法度なのだ。

真実めいた偽りの書物『韓非子』。私の愛読書。



『韓非子』は日本人が愛読したので現代語訳も多い。本田済氏のほか、金谷治氏、町田三郎氏のものも有名だ。本田氏のは訳文のみ。金谷氏のは原文+書き下し+訳文の三点セット。町田氏のは書き下し+訳文の二点セット。本田氏と町田氏は2冊、金谷氏のは4冊。どれも読みやすいので、お好きなのをどうぞ。ただ本田氏のは名訳として知られる。以下、Amazonに表紙の出ていた金谷氏の訳本。

韓非子 (第1冊) (岩波文庫)韓非子 (第1冊) (岩波文庫)
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非公開コメント

いろいろですね

念のため

auの宣伝でしょうか?宣伝に返信するのも馬鹿ですが、宣伝でないなら申し訳ないので一言だけ。
なにが「いろいろ」なのか分かりかねますが、でも、人間ですもの、いろいろだと思います。世の中いろいろな見方があって、その各々に言い分はあると思いますよ。ただ自分の信じたものが得だか損だかの差があるだけじゃないですか?
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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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