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中国思想書いろいろ

昨日は閑散とした当ブログの話しをしたが、Amazonではどんな本が人気なのかと、ちょっと調べてみた。ただし「和書」全体だと知らない漫画がいっぱいだったので、思い切って「和書 › 人文・思想 › 哲学・思想 › 東洋思想 › 中国」に範囲を狭めた。

やはり全体的に『論語』は強い。なにが面白いのか私には分からないが、中国の思想といえば、なぜか『論語』があがる。他にも立派な本は多いし、そもそも日本にはもう『論語』を活かすような素地はなかろうに。たしかに日本は立憲君主国だが、もう君主の尊厳も上下尊卑もほとんど崩壊し、ひたすら真っ平らな世の中に向かっている。『論語』はちょうどその正反対のことを主張しているのだから、こんなものを読んで下手に影響をうければ、おそるべき反動人間になってしまう。

これは第7位(!)にランクインしている『大学・中庸』についても言える。『大学』は四書の1つで、日本では権威を集めた(中国では明朝に権威を集めた)。これは君主の統治と個人の修養が一致するという、驚くべき楽天的な思想を語った書物で、もしこんなものが本当なら、人間はとっくの昔に幸せになって、科学技術の進歩が止まったはずだ。『中庸』は私の嫌いなベスト3に入っているので、寸評する気になれない。中庸の徳は素晴らしいとかいう、誰も達成できないことを述べて悦に入った本だ。

しかし四書の中で『孟子』はずいぶん下位に抑さえられている。同書は私が儒学系書物の中で最も嫌いな本だけに気味がいい。『孟子』は恐ろしく自意識過剰な人間(孟軻先生)の言葉を集めた本で、本書を読めば読むほど人間が偉そうになり、駄目になる。自慢にもならないが、私は本書を冒頭から通読したことがない。本書最末の尽心章句下最終句から上に遡って読むのがやっとだった。なにせ私は冒頭の「なんぞ利を言わん」を見ただけで、司馬遷とは違う意味で、本書をゴミ箱に捨てたくなるのからだ(司馬遷は本を閉じただけだよ、もちろん私と違う意味でね)。

『論語』の訳本では、金谷さんの訳本が第1位なのは予想の範囲内として、私の推奨する貝塚さんのが第11位とあって、ちょっと意外だった。貝塚さんのは思い込みたっぷりの解説がいい。そこがいい。『大学・中庸』も金谷さんのが挙がっている。でもこれは対抗馬が実質的に存在しないので、当然だろう。『孟子』のいい訳本を私は知らない。

四書系統以外では『孫子』が目に付く。これは分かる。『孫子』をご存じない人は、もしかすると兵法書と思われるかも知れないが、いや確かに兵法書なのだが、意外なことに本書は兵法の哲理が説かれるばかりで、実践についてはあまり記述がない。逆に言えば、だからいろいろな利用のしかたができるのだろう。

ちなみに孫子は、有名な孫武とそのもう少し後に活躍した孫ぴんの、二人の総称とされる。むかしむかしの学説では、なんでも本書に説かれる学説は実践的でなく理論的だから古い本のはずがない、きっと孫ぴんの著書に違いない。なぜなら思想は具体的なものから抽象的なものに進歩するはずだからだ、とか言われたこともあった。

しかし別の『孫子』が発見され、どうもそちらが孫ピンの書物だということになった。しかもその孫ぴんの『孫子』はずいぶん具体的な戦争技術を説いている。では『孫子』と孫ピン『孫子』の関係はどうなるのか?そこは安心して欲しい。こう説明できるのだ。――素朴な戦争しか行われていなかった古代には、『孫氏』のような抽象的な議論でよかった。しかし戦国時代になり、具体的な戦争技術が求められるようになると、孫ピン『孫子』のような具体的戦術を説いた書物が生まれた、と。変幻自在だね!学者って素晴らしいね!!

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↑ふつうの『孫子』

孫〓兵法―もうひとつの『孫子』 (ちくま学芸文庫)孫〓兵法―もうひとつの『孫子』 (ちくま学芸文庫)
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金谷 治

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↑時代の進歩とともに進歩した書物を著した孫ぴんの『孫子』

そうそう忘れていたが『老子』もあった。なぜか岩文から最近あたらしく出版されたが、あの薄い『老子』がなんであんなに太くなるのか不思議だ。『易』も本田さんのが挙がっている。まあ『易』が人気なのもうなづける。私は嫌いだが、中国でも日本でもむかしから需要のあった本なのだ。

論語・孫子・老子の次は......しばらくハウツー本のようなのが続き、第29位と第30位に『左氏伝』と『韓非子』が登場。両方とも逸話が豊富だから、読み物として面白いので、そこそこ需要があるのだろう。『韓非子』の後は通俗本が続くようで、まれに特殊な訳本があがる程度のようだ。ということは、そこそこ真っ当な本で上位にランクするのは、この程度ということだろう。ま、たしかに大きい書店に行っても、本棚に並んでいるのは、たいていこれらの本だから、妥当と言えば妥当か。

それにしても金谷さんは人気だな。中国古典関係、しかも思想関係では、異様なほど金谷さんの訳本が溢れている。私は金谷さんの訳本の中では『論語』が一番好きだ。あのなんとでも解釈できる訳文がいい。そもそも『論語』なんて時代が違いすぎて意味不明なのだから、勝手に訳者の思い込みを訳文に加えてもらっては困る。それも貝塚さんみたいに徹底的にやってくれたら面白いが、中途半端なのは一番いらいらする。


その他、懐かしさを思い出した本。

孔子 (岩波文庫)孔子 (岩波文庫)
(1988/12)
和辻 哲郎

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高校生のときに読んで、「武内義雄ってすんげー学者だなあ!」と思った。

基礎からよく分かる「近思録」―朱子学の入門書基礎からよく分かる「近思録」―朱子学の入門書
(2009/01)
呂 祖謙朱熹

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図書館で見かけた。いまさらこんな本をだそうとは、そうとう肝の据わった人間に違いないと、勝手に思い込んだ。本を開いただけで、中身は読んでいない。『近思録』の全訳らしい。

朱子学の基本用語―北渓字義訳解 (研文選書)

似たようなタイトルだが、こちらは陳淳の『北渓字義』の全訳。訳者は朱子学の権威として知られている。別に推奨しない。私はコインランドリーで半分だけ読んで投げ出した。

「朱子語類」抄 (講談社学術文庫)「朱子語類」抄 (講談社学術文庫)
(2008/10/10)
三浦 國雄 (訳・注)

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大昔に出版された『中国文明選』(『中国古典選』の姉妹編)の1冊を復刻したもの。かつては『朱子集』と名付けられていた。いまさらなぜ文庫化されたのか知らないが、もしかしたら下の翻訳にあわせたのかもしれない。『朱子語類』は白話(宋代の口語的文語)で記述されているので、伝統的漢文読解法では読み切れないところが多い。でも『朱子語類』は朱子の思想や朱子学の理解に欠かせない。だから部分訳とはいえ、本書はよく利用された。が、『漢語大詞典』が中国で出版されたので利用頻度は落ちた。『漢語大詞典』は素晴らしい。

『朱子語類』訳注 (巻1~3)

なんでも『朱子語類』の全訳を目指したらしい訳本。学術用語が一切訳されず(すなわち原文のまま)、語釈も乏しい。一般には全く薦められない。ちなみにこの翻訳のために、この種の研究で有名な学者が総動員されている。

世界の名著 19 朱子・王陽明 (中公バックス)

朱子の部は『朱子文集』と『朱子語類』の部分訳。既に入手困難だが、重要なところが丁寧に翻訳されており、朱子関係ではまず読まれるべき訳本といえる。私は学部生のときに読んで、伊藤仁斎の『童子問』に幻滅した。

抱朴子 (岩波文庫)抱朴子 (岩波文庫)
(1997/03)
葛 洪石島 快隆

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内篇だけの翻訳で、しかも書き下しのみ。いまさらこれを読む人はおるまい。だいたい海外の書物に「書き下し」のような専門家翻訳で出版する了見が分からない。

論語を活かす

渋沢栄一先生の本。申し訳ないが、活かすまえに御陀仏になりそうだ。

孟子―聖人君子の笑いが目に浮ぶ (1983年)

重沢俊郎氏の本。すぐれた学者だった......


無意味に列挙しても仕方ないので、次で最後。これは高校時代に図書館で読んだ。いろいろな意味で衝撃的だった本。

儒教の毒

村松暎氏の著書。うろ覚えだが、中国が駄目なのは儒教のせいで、儒教を批判すると今でも日本の学界で村八分にあうとか、そんな内容だったと思う。高校生のときはちょっと驚いたが、実際に研究室に入ると、誰一人、儒教に敬意を示す人間はおらず、私は公然と孔丘先生を罵倒していた。儒教嫌いなのは構わないが、そういう個人的な好みと研究とは全く無関係なので、自分の儒教嫌いを研究に持ち込まれても困るというのが、いまの正直な感想か。

以上、どうでもいいことだが、やはり『論語』は強かった、ということを改めて確認した。だが世間様が好もうと好むまいと、私の好みとなんの関係もないことだけは確かだ。

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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