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『君主の統治について』(感想)

君主の統治について―謹んでキプロス王に捧げる (岩波文庫 青 621-2)君主の統治について―謹んでキプロス王に捧げる (岩波文庫 青 621-2)
(2009/09/16)
トマス・アクィナス

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本書『君主の統治について』はトマス・アクィナスの著で、柴田平三郎氏の訳。岩波文庫。2005年に慶応大学出版会で出版されたものの文庫化らしい。解説とあとがきを含めて238ページだから、小冊子の部類に入る。ちなみに解説は全体の半分あまりある。現時点で定価660円(+消費税5%)。

私の歳になると、知らない分野の教養書(古典?)はあまり読む気にならない。正直に言って、読んでも分からないからだ。本文だけを読んで意味が分かるわけではなく、また解説を読んでも、その解説の妥当性を判断できない。言うまでもなく、私は学者を信用していない。論理的な解説というのは、著者の頭が論理的なだけで、解説としての正当性とは無関係だからだ。極端な話、まったくの与太話であっても、専門家なら適当な史料で誤魔化せば、知らない人間を欺すことくらい分けないだろう。とはいえ、「君主」の言葉に引かれたのと、買えない値段でもないというので、買って読んでみることにした。

まあ、内容はねえ、キリスト教の話を除くと、要するに、君主は道徳を身に付けるべきだというに過ぎない。なんの感動も湧かなかったが、中国でも向こうでも、古い時代は同じことを言うんだなと感じたぐらいだろうか。しかし君主の職務はくたびれる仕事だと考えていたことと、その正当な報酬が神様の恩恵に預かることだとかいう話は、向こうの国らしい考え方だと思った。もう一つ、君主の存廃を民衆が決められると思っているのも、まぁ、向こうの国らしい考え方だ。しかしこれも常識に属することで、だから中国の君主制は驚くべき専制体制として批判されたのだ。だからいちいち感心するに及ばない。

訳文は全体的に現代風だが、ところどころ不似合いな漢語表現(ただし文字は平仮名)が散見されたり、気持ち悪い文章があった。例えば第1巻第1章の標題:
「生活を共にする人びとは誰か王によって慎重に統治されるのが必要であること。」
第2巻第2章の標題:
「王や君主は都市あるいは陣営を建設すべくいかにして空気が健康に良い地方を選ぶべきか。」
意味は分かるが、なんとも気持ち悪い表現に思える。もっとも私の場合、本書全体を通してそれほど精密な議論だと思えなかったので、分かりにくいところは1~2行飛ばしつつ読み通した。

と言うわけで、すこぶる退屈な本だった。ではこれに対して訳者は如何なる価値を与えたのだろうか?本書全体の半分近くを占める解説になにか書かれているのではないか?しかし残念なことに、私は本書の解説を流し読みしかできなかった。内容が面白くなかったのだ。理由は2つある。1つ目は、本書の内容と直接関係のない部分が全体の2/3を占めていたこと。第2は、本書を「歴史の相の下に」位置づけて理解しようとしていたからだ(153頁)。

悪いが私にとって、歴史的にどのような産物だろうと、現在の私に価値を感じられないものは、即、価値がないと思っている。過去に価値があろうとなかろうと、過去にどのような読み方がなされようと、そんなものは知ったことではない。もちろん歴史は客観的(というか人間のあらゆる主観から離れて)に理解でき、その過去をつなぎあわせれば「一般法則」が導かれ、現在を理解でき、おまけに未来も分かる、などという与太話は、敢えて論ずるに及ぶまい。とはいっても、訳者はそこに価値を感じているのだろうから、別にそれを否定するつもりはない。ただ訳者はそれに価値を感じた。私は感じない。だから訳者は本書を評価できるが、私はできない。それだけだ。学者が言うからといって、いちいち強いて自分を感心させるほど、私はおめでたくない。

ついでにもう一つ些細な問題を付け加えておくと、「最近」の動向として参照を求める欧文論文の掲載年が、1950年代から70年代というのは、どういうことだろうか?訳者の解説には、最近とみに研究が盛んだというが、本当にそれは「最近」なのか?というのも、私の知る分野でも、「最近」と称して数十年前の議論を振りかざす人間がいるからだ。しかもその種の人々が滑稽なのは、自分に都合のいい欧文論文は参照するが、自分たちと価値観の対立する欧文論文が提出されるや、無視という手段にでることがあるからだ。

ある考えに対して、他者の否定的意見にも関わらず、一人の学者として「これには価値がある」と主張するのは構わない。学者とはそのようなものだ。そして学問は民主主義では成立しない。世の全ての人間が反対しても、正しいものは正しいのだ。その逆も然り。しかし最近の議論は何が中心で、どのような研究に興味が集まっているかというのは、一学者の興味や価値とは別に、公平に指摘され、評価されなければならない。それが自分の信ずる価値にとって、どれほど不都合なものであってもである。私は本書に対して、寡聞にしてなにが真実なのかを知らない。

という感じの本だった。個人的に、本書全体を通して最も評価できた点は、カバーが綺麗なところだった。岩波文庫は表紙にカラー写真を使っていたかな?最近はめっきり読まなくなったので、なんとなく斬新に思えた。

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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