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(感想)安敏『孔穎達『春秋左伝正義』研究』

あまり気乗りしなかったが、重要なことが書いてあるとやばいので購入した。読書に1~2時間しかかけてないので、細かいことは書けない。こんな内容でしたという程度の感想を書いておく。もちろん書評ではない。というか、実名で書かれた本の書評をHNではしない。

本書は書名の如く、孔穎達に焦点を当てつつ、『春秋正義』について総合的に分析したもの。とはいえ、大半の頁が『春秋正義』に費やされており、孔穎達の解説は『正義』への導論的扱いなので、実質的には『春秋正義』の研究といっても差し支えない。

内容紹介のかわりに目次をあげておく(括弧の符号は適宜かえた)。

緒論
  一、研究問題的提出
  二、『春秋左伝正義』研究状況
  三、本書采用的研究方法
第一章 孔穎達生平及著述考述
  第一節 『新唐書』『旧唐書』之『孔穎達伝』辨異
  第二節 孔穎達主編『五経正義』的個人「準備」
  第三節 孔穎達的著述状況
第二章 『春秋左伝正義』的成書
  第一節 『春秋左伝正義』的成書条件
  第二節 『春秋左伝正義』的編撰及板本状況
  第三節 『春秋左伝正義』「疏不破注」的原則
第三章 『春秋左伝正義』的文学闡釈
  第一節 解喩結合的闡釈方式
  第二節 掲示文学手法・闡発文論思想
  第三節 『春秋左伝正義』的文章規
第四章 『春秋左伝正義』的史学闡釈
  第一節 唐代対『春秋』『左伝』史書性質的認識
  第二節 『春秋左伝正義』対記「史」失実的批判
  第三節 『春秋正義』「以史解経」的目的与内容
  第四節 『春秋左伝正義』「以史解経」之方法
第五章 『春秋左伝正義』的語言闡釈
  第一節 『春秋左伝正義』釈詞的両個維度
  第二節 『春秋左伝正義』的釈詞方法
  第三節 『春秋左伝正義』的釈句状況
第六章 『春秋左伝正義』引書述論
  第一節 『春秋左伝正義』引書索引凡例
  第二節 『春秋左伝正義』引書状況統計
  第三節 『春秋左伝正義』引書状況分析
余論
参考文献
附録一(于志寧所作孔穎達『碑銘』)
附録二(李学勤整理本『春秋左伝正義』引書問題辨誤一覧表)
後記



そうねえ、人様の批判がお嫌いな学者好みの言葉を用れば、こうなるかな。――本書は粘り強く『春秋正義』に正面から取り組み、従来看過されていた孔穎達の生涯、『春秋正義』の成立事情、同書の注釈方法、思想的問題、文字遣い、引用書をつぶさに解明した労作で、ありがちな粗雑な一般論や視野狭小な専門論文の域を大きく越える力作と言える。また本書は砂を噛むようなデータを正確に蒐集し、それらを必要に応じて一覧表にまとめており、『春秋正義』の概況を知るに有益な基礎的情報を提供している。『春秋正義』が春秋学に欠かすことのできない典籍であることに鑑みれば、本書は単に『春秋正義』の研究者のみならず、広く春秋学全般に多大な功績をもたらしたものと言えるだろう、と。

まぁ、本書が『春秋正義』に真面目に取り組んだ書物だという点は否定できない。しかし実を言うと、恐らく『春秋正義』を利用したことがあり、したがって経学に対する一般的認識を持つものが読んだなら、本書から得られる有益な情報はあまりないだろう。逆に、経学の基礎的な知識もない人間が本書を読んでも、厖大な引用文に辟易して読む気になれないだろうし、読んでも意味はわかるまい。

要するに、本書は総論としては具体的に過ぎ、専論としては総論に過ぎるのだ。従来の問題をくみ上げ、それを比較的穏当な判断の下にまとめなおしただけ、というと申し訳ないが、さほど斬新な解釈が提示されたわけではない。すこぶる常識的結論しか導かれていない。これは決して悪いことではなく、昨今のやたら新説を提示したがる学者に比べればよほど好感が持てるものだ。しかし、それならば、春秋について一定の知識を持つ者が読んでも、あまりやくには立つまい。ましてや『春秋正義』を専門に扱う人間などほとんどいないから、学界に与える影響もほとんどないと思われる。

少し具体的に触れるならば:

本書は目次の通り、孔穎達の生涯、『春秋正義』の成立、解釈方法(文字・史学)、引書状況を分析したものである。たしかに各書を利用して孔穎達の生涯の異同を詳細に調べたり、『春秋正義』の成立過程を詳細に追跡したり、解釈方法を一つ一つ例を用いて説明したり、引用状況を一覧表にして見せたのは立派だと思う。しかし、それらはすべて従来知られていたものだ。ただ周知のことなので、あえて論文にしなかった、というものばかりである。

特に第三章から第五章までは既知の事柄を莫大な引用文献で説明しており、冗長の感は否めない。『春秋正義』は杜預を重んじているが、服虔らの学説も汲み取っていたとか、杜預の解釈を敷衍したとか、杜預の間違いを弁解したとか、典拠に気をつかっていたとか、劉の解釈を大幅に持ち込んでいるとか、歴史で経文を理解するという隋唐の風習を承けていたとか、等々。恐らくこれを知らない人はいないだろう。率直に言って、全331頁の本書が100頁余にまとめられておれば、もっと高評価を与えられたと思う。

ただし丁寧に書かれた本なので、利点ももちろんある。本書最大の利点は、随所に挿入された表(特に最終章の引書の統計)と、孔穎達の生涯と『春秋正義』成立事情に関する資料が列挙されていることだろう。資料の出処を忘れた場合などには、大いに利用に弁がある。

またこれは研究の本筋ではないが、本書は最近の研究に似合わず、非常に謙虚な姿勢で終始一貫していた。これは大いに評価できる。「俺は精一杯やった」という思い込みを評価に持ち込んだり、「こんな斬新なことが分かった」と言いながら旧套依然のことを別の表現に仕立てただけの学者が多い中、本書の著者にそれはない。模範的な研究態度と言えるだろう。これは声を大にして言いたい。

そうそう前に読んだ『清代春秋穀梁学研究』にも引用されていたが、中国ではガダマーの『真理と方法』がはやっているのかね?本書にも引用されていた。私も修士の時代に興味をもったが、思想背景が違いすぎて利用できなかった。もっとハッキリ言えば、もしあれを中国の研究に持ち込めば、ごくありきたりな読書法になってしまうのではないだろうか。でもそれはともかく、中国では『真理と方法』が全訳されているみたいですね。日本でははじめの1冊だけ発売されて............と思ってさきほど調べたら去年に第2冊が出版されていた。これってまだ翻訳がつづいていたのね......とっくに流れたと思っていた。

最後に話しがそれてしまったが、本書を総論すると、『春秋正義』を知りたい人には便利だが、左氏伝や春秋学全般について知りたい人にはすすめられない。でも謙虚なので悪い本じゃないよ。

2009/12/13:字句の修正

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ジャンル : 本・雑誌

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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