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万斯同『明史』

『明史』は明朝一代の歴史を記した中国正史の一つで、その体裁の完備したるに関わらず、内容において粗雑であるとの謗りを受けてきた。それはそうだろう。明代くらいになると、正史以外にも多くの書物が残っているから、『明史』のありがたみなどないに等しい。できばえから言えば、『漢書』や『史記』と大して変わらないはずなのに、あちらは太古の昔とて、代わりになる史料がないものだから、内容の如何に関わらず、金科玉条のごとく扱われる。しかし後代のはるかに完備した史料を用いて作られた正史にして、既に必ずしも価値あるものと見なし得ないならば、おのずと『漢書』や『史記』の価値も知れるというものだ。言うまでもなく、古い史料が正しいわけではない。発掘された金石文や石刻が別段正しいわけでないのと同様に。

まぁ、それはいいのだが、実はちょっと面白いものを見つけた。あくまでも個人的に。

『明史』の仲間の一つに『萬斯同明史』がある。もちろん萬斯同の著した『明史』のことだが、ややこしいので『萬斯同明史』と人名まで括弧に入れて記入する場合がある。この『萬斯同明史』、ふつうの図書館には収蔵しておらず、なかなかお目にかかれないのだが、数年前に『続修四庫全書』が発売され、その中に収録された。おかげで世界レベルでの利用頻度は少し上がったのだが、そういう叢書を収蔵している研究機関は多くない。だから「少しマシ」になっただけで、依然として利用は難しかった。

ところが、何を血迷ったのか、中国がこの『萬斯同明史』を売り出したのだ。現在でも上海古籍出版社から発売されている。例えばここ(リンクは書虫。「目次」をクリックして笑ってしまった)。

『萬斯同明史』は『明史』や『明史稿』の稿本で、立伝数などはそれらより多い。だから明代の人物を『大漢和辞典』などで調べると、『明史』などには立伝のない人物の伝記が、この『萬斯同明史』にあったりする。もちろん正式に出版されたものではないから、上の上海古籍の本も鈔本の影印本だが、写りは綺麗で見やすい。四庫全書クラスとは言わないが、同じ鈔本でもこのくらいだと価値がある。ちなみに気になるお値段は、3~4万するらしい。全8冊だから、しかたないか。それにどうしても必要な人には、絶対に手に入れられない値段ではない。朗報と言うべきなんだろうね。そう思っていた。

ところが、この『萬斯同明史』、最近切り売りされ出した「凱希メディアサービス」のデータにも収録されることになった。検索は北九州中国書店の専用検索で「万斯同」と入力すれば出て来る。............しかもお値段は5000円。たしかにこれはデータだけで画像がないから、そのぶん値段も安くなっているのだが、ちょっと紙の値段と違いすぎやしないだろうか?いかに『萬斯同明史』が珍しかろうと、多くの原史料そのものの出版によって、既にこの種の編纂物の価値が低下している現在、ハッキリ言って、検索さえできれば本体はいらないといっても過言でない。わざわざ福沢先生を数枚だして紙を買う気にはとてもなれないではないか。

私には関係ないことながら、笑える発見だったので記しておく。ちなみにこれを知ったのは去年のことです。


それにしても件の凱希メディアサービスの値段の付け方はよく分からない。『萬斯同明史』はともかく、それと同じくらいの分量しかないはずの『中興礼書』『同続編』は、なぜ都合1万4千円もするのだろう?ほかにも分量と値段の不釣り合いなのが多いような気がする。

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