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恩の売り方・王旦と寇準

李・張詠・王旦・寇準というと、北宋初期の名臣として知られているが、彼等はそろいもそろって太平興国五年(980)の科挙合格組で、当時でいう「同年」だ。同年とは、同じ年という意味ではなく、科挙を同じ年に合格した人の意である。ちなみに四人の生卒年をあげると、李は947-1004、張詠は946-1015、王旦は957-1017、寇準は961-1023。李は聖人宰相として、張詠は蜀の治績で、王旦は名宰相として、寇準は澶淵の盟で、各々歴史に名を止めている。

きょうはそんな四人の中、王旦の売名行為を記しておこう。さすがに名臣ともなると遣り口が違う。スマートなだけではない。結果的にその人物に恩を売るばかりか、皇帝には感心され、世間には尊敬され、歴史には名臣と騒がれる。人間としてこれほど徳のある行いはない。


王旦が宰相、寇準が枢密使(国防長官)のとき。

宰相府から枢密院に事案を送ったところ、書類に不備が見つかった。すると寇準はすぐに真宗皇帝に訴えた。真宗が王旦に言うよう、「宰相府は四方が仰ぎ見るところ。こんなことでどうするのだ。」王旦、頭を下げて、「まことに私たちの責任でございます。」宰相府の役人も罰を受けた。これを知った枢密院の役人は冷や汗もの。寇準にこう囁いた。「宰相府との間にいざこざがあっても、むかしは関係部署どうしで処理させ、宰相に謝罪させるようなことはありませんでした。」

しばらくして枢密院から宰相府に事案を送ったところ、こんどは枢密院の書類に不備が見つかった。宰相府の役人はそれを見つけると、飛び上がって喜び、さっそく王旦に見せた。ところが王旦はすぐ枢密院に送り返してしまった。こちらは枢密院の寇準。宰相府の態度を知らされて大いに恥じ入った。そして王旦に語るには、「王同年の度量には感服した。」しかし王旦はなにも答えなかった。

こんなこともあった。

王旦は真宗に見えるたびに寇準を褒めそやしていた。ところが寇準は王旦を貶してばかり。ある日、真宗が王旦に言うよう、「卿がどれほど褒めても、彼は卿の悪口しか言わぬぞ。」王旦、「道理として当然でございましょう。私は久しく宰相の任を忝なくしております。ならば政治の失敗も多くございましょう。寇準が私のあやまりを陛下に直言したとあらば、まさしくその忠実・正直を知れるというもの。これこそ私が寇準を重んずるゆえんです。」これを聞いいて真宗はますます王旦に心を寄せるようになった。

そして事件は起こった。

寇準が枢密使を辞めることになった。こっそり王旦に人をやり、使相(すごい名誉職)を呉れるよう頼み込んだ。ところが王旦はびっくり仰天、「使相などと......寇準はなにを考えているのだ。ましてや私がタカリを相手にすると思うのか」と言下に断った。もちろん寇準は深く怨んだ。

ほどなく王旦は真宗から意見を求められた。「寇準が辞めるんよ。どう処遇したものか。」王旦、「寇準はまだ三十にも満たぬ身ながら、先帝の恩をこうむり、枢密院に責を任かされました。ましてや彼は才能と人望に恵まれた男。使相など与えて地方を守らせれば、世の人々に朝廷の度量を知らしめることができましょう。」こうして使相の辞令が降った。

寇準はさっそく真宗に面会を求め、嬉しさのあまり涙を流して訴えた。「陛下のおかげです。陛下でなければ、このような栄光はとてもとても......」そこで真宗は詳しく語ってやった、王旦との会話のこと、そして寇準に使相を推薦したことを。ここに至り、寇準はようやく我が身を恥じ、そして王旦の賢を称えた。「王同年の度量、俺ごときではとても測りきれない!」


............まぁ、本人たちがそれでいいならそれでいいけど、『韓非子』的にはアウトじゃないかね。真宗も王旦も。王旦はうまいこと皇帝を使って寇準に恩を売り、寇準も皇帝ではなく王旦に感謝するんだから。王旦みたいな平和な人が宰相だったからよかったものの、結局、残るのは王旦の人望と名声と権力だけで、皇帝の権力はかえって危うくないか?

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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