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読書感想

アドルフ (岩波文庫)アドルフ (岩波文庫)
(1965/01)
コンスタン

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Fridayさんのところで見かけて、おもしろそうなので読んでみた。コンスタンの『アドルフ』。岩波文庫で本文138頁弱の薄い本だし、優柔不断でダメダメな男というのが興味を引いたのだ。

内容は「これをしも恋愛小説というべきであろうか。発端の1章を別とすれば続く2章だけが恋と誘惑にあてられ、残る7章はすべて男が恋を獲たあとの倦怠と、断とうとして立てぬ恋のくびきの下でのもがきを描いている」(岩波の表紙)ものらしいが、要するに、一度は激しく燃えた二人であったが、男が冷めたので女に別れ話を切り出そうとしたら、女が嫌がるので、ついつい断り切れず、そのままズルズルいったあげく云々というお話だった。ようするに誠実にふるまいたいが優柔不断であるため、自分も相手も深く傷つけてしまった男のお話だった。

私はあまり小説の類は読まない。面倒くさいからだ。歳のせいもあるのだろうが、結論を速く知ろうとして、くどくどしい行文がイライラするというのがその一つ。もう一つは小説に恋愛はつきものだが、その恋愛が面倒くさい。別の目的の枷として恋愛を利用するならまだしも、それ自体を中心に書かれると、はやく次いけよ!という気になる。最後に私は中国の思想を研究対象にしたせいか、ふつうの悲劇が悲劇に見えなくなった。呂后?人彘ってステキだよね、みたいな。

とはいえ、本作の主人公の誠実に振る舞いたいのに!というものには、少し思うところがあった。少し話しはそれるが、北宋初期の大臣に寇準という男がおり、これは非常に豪放磊落な人で、また見識も気概も人一倍だったらしいのだが、如何せん、出世が速すぎたせいで、知識はあったが「学問」はなかったらしい。そこで張詠という兄貴分から、「あいつは学術がない」とか謗られていた。天罰覿面、ではないが、張詠の言葉が当たって、寇準は政敵の陰険野郎・丁謂に足をすくわれ、見事、最果ての地に罪人として流され、命を終えた。

今の時代では、なぜ張詠が「学術がない」と文句をつけたのか、少し分かり難いが、それは彼らにとって学問が、技術や就職の手段ではなく、物の本質や人間としてなすべきことを見定める手段だったからだ。だから学問がない人は、見識が定まらず、ふらふら人生を歩むことになる。寇準のような素質に恵まれた人は、そこそこうまく歩めるが、それでも分かってやっているのではないため、いつ間違えても不思議ではない。張詠としては、寇準にもっと見識を身に付けてもらいたかったのだろうが、残念ながらそうはならず、望ましからぬ結果に陥ったのである。要するに、一見、人間的に正しいことや、感情的にそうすべきだと思うようなことに身を委ねるのではなく、人間として最も守らねばならぬところを抑え、それに従って行動すれば、一つの憂いもなくなる、ということになる。

............少しどころか大幅にずれた話しになってしまったが、本作の主人公の「誠実そうに振る舞って最後は冷酷になる」というのは、宋代士大夫風に言えば、この種の学問が欠けていたにすぎず、とりたてて驚くほどのことでも、嘆くことでもなく、単なる不学者の当然の末路ということになる。

何はともあれ、小説を読んで久しぶりに楽しめた。Fridayさんに感謝。ちなみに岩波文庫は在庫切れだそうです。

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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

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こちらこそ感謝

中国思想にはあまり詳しくありませんが,とても深い考察に感動いたしました.
小説はあまり読まないなどとおっしゃらずに,是非これからも時々書評を書いていただけると嬉しいです.
とても勉強になり,こちらこそ感謝です.

No title

わざわざコメントありがとうございます。
記事内容は小説からズレてしまいましたが、肝心の心理描写もなかなか深い洞察力だったと思います。特に社会的落伍者になりつつある男の心理描写は現実味がありました。人間は自分の血肉になったものしか筆にできませんから、著者のコンスタンにはその種の洞察があったのでしょうね。

小説を読み続ければ、Fridayさんのように小説そのものを内側から味わえる楽しみを見いだせるのだと思いますが、どうも私はせっかちのようで、なかなか難しいところがあります。今後もFridayさんの記事を楽しみにしております。よろしければまたご訪問ください。

※もと2010-03-24(23:23) のコメント。非常にまずい表現があったので改訂した。
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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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