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読書感想

谷省吾氏の『垂加神道の成立と展開』(国書刊行会、平成13年)を読んだ。久しぶりに研究書らしい研究書だった。とはいえ、長年、神道を修めた人の書物だけに、とうてい私には論評できないので、いつもどおりの読書感想文でも書いておきたい。

本書前篇は「山崎闇斎と垂加神道の成立」と題して山崎闇斎のことを、後篇は「垂加神道の継承と展開」と題して山崎闇斎没後の垂加神道(玉木葦斎、若林強斎、跡部良顕が中心)のことを書いている。論文集のような作りになっており、意識的に体系立てて書かれたものではないようだが、全体を通して読むと、おのおの篇題のごとく、垂加神道の成立とその後の継承展開が時間順に語られている。

著者は大正10年生まれとあって、さすがに古風な感じは受ける。しかし最近の自己主張だけの目立つ研究ではなく、一つ一つ丁寧に歴史的事柄を開明していく態度には感銘を覚えた。本書のようなものこそ、史料に語らせるスタイルの研究というべきだろう。したがって、本書には垂加神道と幕府、あるいは社会のような論攷は見られない。もちろん現代人が求める「歴史の事実」も入っていない。あくまでも著者本人が垂加神道の内部に立ち入り、そこに即すことで、一箇の人間の真理(生死の問題など)を究めようとするにあるように思われる。私などは、思想の研究は本来こうあるべきだと思って已まない。

本書は思想を問題にしているが、さりとて研究対象は事柄に絞られている。著者自身が、この思想はこうだと思う、というような余計な穿鑿は加えていない。著者の心情はまた別に述べられ、あくまでも対象とする人間の思想が、あるいは宗教的境地が史料に即して語られ、史料に即し得ない部分は、留保されている。まま著者の意見の加わることがあっても、それは明示的に想像に依ることが指摘されており、安心して読んでいられる。こう言うところにも、私は深く感動した。

以上のような内容だけに、垂加神道の諸々、あるいは本書所収の論攷そのものに興味を持つ人には大いに参考になる書物だが、手軽に人の研究を読んで理解したつもりになりたい学者や、世間流行の歴史学的な意味(垂加神道と政治あるいは社会の関係とか、国際関係とか)を知りたい人には、恐らくほとんど役に立たないだろう。もとよりそういう人は、学会の僻地にある垂加神道に興味など示さないだろうから、それはそれでいいのだろうけども。

個人的に勉強になったのは、価値や学問的成果は全ての人間に開示されるべきだという江戸後半あたりから現在全盛期を迎えている考え方と真反対の、価値や真理が特定一部の人間にしか示されない秘伝形式の学問にも、存立価値があると思えたこと、および跡部良顕の事跡。その他、なかなかお目にかかれない史料の復刻も便利に思えた。そこは、まあ、史料の問題は研究者には関係なかろうが、素人ということで。

どうでもいいけど、なぜか「日本の古本屋」に本書の古本がたくさん流れていた。ちょっと悲しくなった。

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