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谷垣守『神代巻速別草』(はしがき)

神道を學ぶ者は、先此名目を覺悟したがよい。神道と云は、神國に生へ付いた道の名目ぞ。然るに其正意を云へば、上一人の帝王より下萬民迄の心法の主本で、神聖の一言一行の事實事跡が直ちに道の本體、教の起元となつて、神皇相傳の心法に存することぞ。神道の名目、上代には必しもあるまじく、地盤になつてあつたものなれども、應神天皇の時、儒經が渡り、欽明天皇の時、佛法が入て以來だ。異國の道に混雜せざる為に、神道の名目起れることも自然の勢ぞ。右云如く、神道は、神國の神聖より承繼玉ふ道なれば、是亦自然の名とみても害はない。大都神道は文字に載せ議論に發して道の本體、教の支用を説と云こと決してなく、物に載せ言語に寓して自然に其道其教流行することで、神代卷上下の事實事跡が直ちに天地人の道、我國無窮の教で、今日日本に生るゝ人の心法の基本にすはることなれば、假令道と稱し教と號して、件々の名目を立すといへとも、不學无術の野人村夫迄も、忠孝の心を生れ得ぬと云ことはない。此道を指していへば、朝家にあつては王道、武家にあつては武道、四民の上では日用其任職に應し上に事へ下に接る人家尋常の事實が、直に道で教ぞ。當時昇平百年の聖朝、幕府に行はれ、用らるゝ所の政事教化、其起元神代卷に存せぬと云ことはない。上代には此道開明ならず、後世に全備すると云ことは、神道にはなことぞ。右の如く神道の稱は、全體の名目で、王道武道は天子將軍に付ての名で、古今沿革ありといへども、當時でいへば王法は天子の御心法で、其業にほどこしあらはさるゝ處は律令格式、天神地祇をいつきまつらせ玉ふ祭政のことぞ。武術は守禦征伐で、其用は治教のことで、王武一源、君臣同根、神明の心法、實に唯一の神道ぞ。扨、神道と云事は、用明紀と孝徳紀と二所に出てある。用明紀には天皇信佛法尊神道とあり、孝徳紀には「尊佛法輕神道(昔生國魂社樹之類是也)」とありき。又孝徳紀に三年の詔に、「惟神(惟神者、謂隨神道亦自有神道也)我子應治故奇」ともある。是等が出處であらふ。多くは佛道に對して云てある。又天武天皇十二年の詔に、「明神御大八洲」ともあつて、天子は直に明神(アカラカミ)、神皇一體、神明と天使の御心法が同一躰にして大八洲を治玉ふ。然れば神道と云ふことは、專ら天子の御心法で、三種神器のあづかる處なれば、今地下で、神道を相傳するの、我こそ三種の神器の傳を得しなどゝ云は、至極勿躰なきことで、我國實に道の人と云は、天子より外にはないことぞ。故に神道者、神學者と云ことも、決してないことで、右段々云如く、神道と云は大本で、往古より天地と共にはへ貫た道で、其神道の業にあらはるゝ所は、天神地祇を祭り、外に私意を用す、即祭政一致で正直の心法が天神地祇と一まいになつて、三種御合躰でほどこし玉ふ政が道の主本、君臣父子夫婦、夫々の教となつて、法りをはつれず、然れば天子の齋き祭らせらるゝ御心法がとんと天神地祇と合一で治め玉はねはならず、其合徳の業にあらはるゝ政が則教ぞ。故に上代には教と云こと格別にくださす。日本紀に在る處の事實が道の本體で、自ら教も全く備り、今日の人の根ずはりになつてあることぞ。我國身を持ち國家を治る人道、今自然に王化に服し養はれて、あるなりが日本人のなりぞ。教と云ことの正サシク辭にあらはれてみゆるは、景行紀に日本武尊東夷征伐の時、大倭姫命、草薙劔をあたへ玉ひし時に、「愼而莫怠矣」とある一句が、神道の教の詞にあらはれた初とみゆる。又推古天皇十二年に聖徳太子十七ヶ條の憲法を作り、教政を立玉ふ。第二曰「篤敬三寶。三寶者佛法僧也。云云」とあり。三寶は玉鏡劔で、云てありさうなものじやに、左はなくて太子の御聰明の思召がコウジコウジて佛道を尊信なされ、佛法の事にしてあるは、大義に明らかならぬ證據、嘆しく信用しがたきことぞ。又舒明紀に「亦大臣所遣群卿者、從來如嚴矛(嚴矛、此云伊箇之保虚)取中事而奏請人等也。云云」、又皇極紀に入鹿の亂の時、中大兄の入鹿が徒へ、「天地開闢、君臣始有云云」の事を説さとし教られたことがあるが、我國なりの君臣ハヘヌキの大義にあきらかなねづよいことぞ。


底本:『秦山谷重遠先生 都翁澁川春海先生 神代温義』(昭和15年、高知縣神職會)附録

神代卷速別草第一
延享三丙寅年六月廿三日谷垣守翁於岡田宗殖宅御開講
徳田敷要、岡田宗殖 謹記

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