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読書感想

ひところ話題になった山川の『もういちど読む山川世界史』を読んだ。って、まだ近代の半分(全体の半分でもある)までだけど、でもだいたいの傾向は分かった。

全体は古代・中世・近代・現代の四つに分かれ(近代は大航海時代あたりから、現代は第一次世界大戦前から)、現代に近づくにつれ相対的に頁数が増える。内容的には頁数の関係から細かいことはなにも書いていないが、その分だけあっという間に時代が過ぎるし、固有名詞も少ないしとあって、読んでいて痛快だった。南宋なんて8行かよって。

ただし欠点もある。頁数が絶対的に少なすぎて、説明になっていないところがあるのだ。短くまとめすぎたためか、文章を圧縮しすぎて分かりづらいところがあるほか、人名・地名といった歴史用語の羅列におわっている文章すらあった。とはいえ、これらは少しでも正確な歴史的事実を、少しでも短く説明しようとするゆえのことで、遺憾ではあるが、あまり批難すべきでもない。大人が対象の本だから、そこらはおおらかな気持ちで読むべきなのだろう。

ということで、読む前はどうかなと思っていたけど、世界史をざっとおさらいしたいという人には便利な本だった。もう少し頁数があれば、なおよかったかな。

ちなみに山川には『詳説世界史研究』という参考書があり、本書よりはるかに詳細な記述が売りだ。しかし私は『詳説』を褒める気にはなれない。なぜなら『詳説』は大学受験向けの参考書で、読者の対象も高校生だからだ。それにヘタに頁数があるためか、中途半端に細かい記事が目立ち、かえって理解の妨げになる。

歴史の説明は、書き手の文章力以外に、読み手の能力をも要求する。読み手に現在と異なる価値観を理解する能力がなければ、どれほど完璧に説明しても、理解できないだろうし、おそろしく曲がった理解をするだろう。その意味で、『詳説~』は、高校生対象であるにも関わらず不必要に細かく、またその割りに正しい説明がなされていない(おそらく諸般の事情で書きたくても書けないのだろう)。

もっとも大人用に『詳説~』を出版するなら話しは別だ。その場合は、歴史とは何か、そもそも歴史とはどのように作られるのか(まさか歴史は神さまが与えてくれたものと思っているわけではあるまい。歴史は学者が作るのだ)、なぜ新発見もないのに学説が変わるのか、等々、高校生が知る必要のないものであっても、大人は知っておくべきことを説明してほしい。

そして説明文にも思い切って踏み込んだ発言を入れて欲しい。例えば、農奴とか小作とかが何故歴史で重視されているのか(学者が当時の流行にのって吹聴しただけなのに、大人の事情でまだ抹殺できずにいるとか)、どのような形で歴史が書き換えられていくのか(極めて現実的で実益のある人間関係上歴史は書き換えられる必要があるのだとか)、等々。もちろん一つの事柄の確定が不可能なこともある。また事柄の意味が三つも四つもある場合もあるだろう。それらは高校生には伝えにくいものだが、大人なら大丈夫、バンバン書いて欲しい。

もっともそんなことを知りたいのなら、大人なんだから、別の歴史の本を読んだらいいとは思うけど。


ああ、もちろん『詳説~』を読む人に文句はないよ。人はいろいろな目的の下に本を読むのだから、『詳説』が必要な人は『詳説』を読めばいいし、だれもそれに文句を言う必要はない。ただ『もういちど読む~』の詳しい版を求めて『詳説~』を読もうと思うなら、止めた方がいいというだけだ。『もういちど読む~』を読んで歴史が好きになり、もっと詳しく知りたいと思うなら、それこそ中央文庫から出てる『世界の歴史』でも読んだ方がいい。まぁ、あれは著者によって偏向と優劣が甚だしいという難点はあるけども。

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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