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偽装裁判

いまから1000年ほど前に相州の獄というのがあった。単なる収賄事件なんだけど、そこでの取り調べ方法に問題があったとかで、その当時ずいぶん問題視された。これとは全く関係ないけど、昨日ブハーリンの裁判について書いたものを読んでいたら、似たようなことをしていたので(規模ははるかに大きいけど)、人間はどこでも同じだな~という嫌な思いをしてしまった。

私の読んだ本によると、ブハーリンに無実の罪を着せて銃殺しようと企んだスターリンは、ブハーリンを厳しく取り調べて嘘の自白に追い込んだ。さらに裁判を開いてブハーリンに自白を認めさせ、その正当性を立証しようとしたらしい。そのために外国からの記者も集めて、大々的に裁判を行っうことになった。

しかし裁判でブハーリンが自白を否定し、余計なことを喋られると非常に困る。そこで考えたのが、偽装した裁判を開いてブハーリンに発言させ、もしそこで自白を覆すようなことを言えば、嘘だとばらして徹底的にしごき倒すというものらしい。そういう偽装裁判を何度か行った後、最後に本当の裁判を行って、衆人環視の中で自白の正しさを認めさせたとかいう。

この話がどこまで正しいのか分からないし、そもそもブハーリンは裁判で微妙な発言をしているから、最終的には本当の裁判か偽装したものか見抜いたのではないかと思わないでもないが、まあそれはいい。要するに嘘っぱちの裁判を開いて被告を欺し、いざというとき被告が何を言い出すかを調べるというのだろう。そしてこれと同じようなことを1000年ほど前に蔡確先生は行ったらしい。もちろん中国のことだから、もっと前にも同じことをしているだろうけども。

相州の獄を調査することになった蔡確は、士大夫をしょっ引いて牢屋にぶち込み、一般囚人と同じように扱って恥辱を加えた。さらに食事を与えるときも、家畜にするのと同じように、食材を大きい器に放り込み、ぐちゃぐちゃにかき回して出したらしい。そればかりか取り調べのために牢屋にぶちこんだのに、囚人(被告)の話を全く聞こうとせず、長い間ずーっと放ったらかしにしておいたという。このため屈辱的な扱いに我慢できず、さりとて弁解する余地も一切与えられないとあって、たまに蔡確が話を聞いてやると、囚人はあることないことべらべら喋ったらしい。

しかしこの蔡確の取り調べに上官と同僚は非常な不快感を示し、なんとか蔡確を調査から閉め出そうと考えた。そんなある日、牢屋の近くから人の絶叫が聞こえたという。上官はほら見たことかと思って、すぐに皇帝(神宗)のもとに走り、「調査で拷問が行われています。しかも相手は士大夫なのです。このような暴虐は許されません」といって蔡確の排斥を訴えた。皇帝も疑問に思って、中使(宮中から派遣される使者)に違法行為がないかどうかを調査させることにした。

調査すると、人の絶叫は牢屋から聞こえたものではなく、近辺の人間のものだと分かったが、中使は蔡確の取り調べ方法に問題があるらしいことをかぎつけた。そこで違法な取り調べが行われていないかどうか、じかに囚人に聞き取り調査を行うことになった。しかし蔡確とすれば迷惑な話だった。せっかくもう少しで事件も解明するものを、余計なことをして有耶無耶にするわけにはいかない。そこで彼は一計を案じることにした。

さて中使が牢屋に到着すると、囚人達はつぎつぎに蔡確の暴虐を訴え出るとともに、自白はすべて嘘で、蔡確のためにやむを得ず喋ったものだと言った。しかしそこに蔡確が現れて、「これは中使じゃない、私の手下だ」と笑って言った。囚人はびっくり仰天したが既に遅く、蔡確は虚偽の発言をしたといって、調査の不正を訴え出た囚人をしごき倒したという。そういうことを何度も行ったので、囚人も疑心暗鬼と恐怖に陥り、結局本当の中使が調査に訪れたときには、何も問題ありません、公正に取り調べが行われています、と自白したらしい。もちろんこのために蔡確を弾劾した上官と同僚も処罰され、蔡確に刃向かうものは一人もいなくなったという。

似ているといっても、規模は段違いだし、そもそも相州の獄は「粛清、銃殺」みたいな物騒な事件ではなく、現実問題として不正があったことは確かだったらしいのだが、いずれにせよあまり上品な話でないのは確かだ。ましてや蔡確はこれによって自分の上官のポストを手に入れたのだから、当時の士大夫から憎まれるのも無理ないことだ。

え?士大夫を一般人と同等に扱って何が悪いのかって?それは決まってる。天下の士大夫さまが、凡俗の一般人程度と同程度の扱いを受けるなんて、許されないことだ。士大夫さまと一般人とは人間的価値の上から考えて、天地の隔たりがあるんだ。一般人なんぞは士大夫さまの足下に這い蹲っていればいいんだよ。という考えがあるからです。

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