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孔子の資料(2)

前回の続き。(改訂:2009/04/30)

(3)孔子の生涯

簡単に言うと,孔子は魯の襄公21年に生まれ,哀公16年に死んだ。しかしなかなか自分の理想通りの人生は歩めなかった。周王朝建国の功臣・周公丹の封国である魯に生れた孔子は,必ずしも幸福とは言えない幼少期を送り,諸種の学問を修め,理想の実現に向けて努力した。しかし昭公の放逐,陽虎との政争,隣国で大国で斉との抗争の果てに,夢やぶれて母国を去り,自分の理想を実現できる人を探して諸国を歴訪する。孔子の名声は諸方にも拡がっていたので,結構なもてなしを受けることもあったが,逆に厄介事に巻き込まれたこともあった。しかし14年にわたる外遊にもかかわらず,遂に孔子の意にかなう国は存在せず,また自身も老齢になったことを機に,母国魯に帰国し,後進の育成に当たることになる。

70近くになって母国に帰った孔子は,ここでも不幸に襲われた。まず息子の孔鯉が死に,ついで最愛の弟子・顔回(顔淵)を失い,さらに愛弟子の仲由(子路)も失い,失意のままその翌年に没した。その最晩年,すなわち顔回の死んだ翌年,子路の死ぬ前年,太平の世にのみ現れるという麒麟を獲て,遂に自分の道の行われないことを知り,後世に王道を託して作ったとされるのが,『春秋』である。

孔子の生涯については大昔から研究されている。特に『論語』各条の歴史的背景や意味は歴代の注釈に多く見える。有名どころでは,昨今の研究に基礎を与えた清朝考証学者の諸成果(劉宝楠『論語正義』など)や,近代以後の研究がある。しかし普通の日本人がそれらを読む必要はないし,また読むにはかなり高度な専門的知識を要する。だからその成果だけを読めばいいのである。ではその成果はどこに書かれてあるか。言うまでもなく,『論語』の翻訳の解説や付録(年表など)である。要するに,解説や付録の豊富な『論語』の翻訳を読めば,孔子の生涯に関するおおよその研究成果は入手できるのである。

ただそのような個別的な歴史ではなく,孔子がどのような生涯を歩んだのかを知ろうと思えば,おのずとそれ専用のものがある。孔子の生涯は金谷治氏の『孔子』(講談社学術文庫)が便利だが,孔子の生涯を概観するならば,結局のところ『史記』の孔子世家(こうしせいか)を読む必要がある。そもそも孔子の伝記の最古の編集物にして最後の拠り所は,この孔子世家を置いて他にないのである。

『史記』は歴代帝王の年譜を記した紀,諸侯の年譜を記した世家,専門分野の歴史である書,年表である表,そして各時代に活躍した人間の歴史を扱った列伝(伝)の5分類から成り立っている。孔子は諸侯ではないが,諸侯並みに扱われ,その生涯は世家に収められた。

『史記』の翻訳は筑摩書店に全訳があるが,少し読みにくい。現在,岩波文庫から世家と列伝が出版されており,世家は全3冊,孔子世家はその中巻に収録されている。孔子の生涯を知りたい場合は,まずこの孔子世家に目を通せばいいわけである。

しかし孔子の生涯とともに,最低限その周辺の政治的事件もあわせて知りたい向きもあるだろう。春秋時代の歴史そのものは,現代の教養書(「世界の歴史」とか「中国の歴史」など)に任せるとして,孔子の生涯とすり合わせるには,もう少し詳しい本を読む必要がある。これには大きく2つの方法がある。

まず最も簡便なのが,同じ『史記』の他の世家を読むことである。孔子の死亡,すなわち春秋時代までの王室の伝記は,『史記』本紀(周本紀)を読む必要があるが,諸侯の歴史は岩波文庫『史記』世家の上巻に収録されている。ただし『史記』の記述は簡略である。孔子の関係記事を探るために『史記』の本紀や世家を開いた人は,おそらく拍子抜けするだろう。この程度の知識であれば,それこそ翻訳本『論語』の解説の方が詳しいだろう。そこで孔子の活躍を詳しくしるには,どうしても『春秋左氏伝』を開く必要が生まれる。

『春秋左氏伝』(『左氏伝』『左伝』ともいう)は,経書『春秋』の注釈書とされている。しかし歴史的記述が豊富なため,経書の注釈書を離れ,単なる歴史書としても読まれてきた本でもある。収録範囲は魯の隠公元年から哀公27年までである。『左氏伝』は少し癖のある本で,経文(つまり『春秋』のこと)の配列にそって事件が列挙されており,事件の発端と顛末を手っ取り早く理解するには都合が悪い。しかし『左氏伝』は現存の史料の中で,孔子生存期間の歴史を最も詳しく書いており,孔子の時代を知るには不可欠の読み物である。そもそも年月日単位で『論語』の記述を追跡できるのは,本書に負うところ最も大きい。

『春秋左氏伝』も,『史記』と同様,岩波文庫に全3冊に収録されている。孔子の誕生から死亡まで,魯の君主でいえば襄公から哀公までは,岩波文庫の中巻と下巻に相当する。しかし孔子が著名になった後の歴史だけでいいなら,昭公から哀公を収めた下巻だけで充分である。

さきに言ったように,『春秋左氏伝』は年月日順に記録されているため,記事を読むには便利が悪い。岩波文庫の『左氏伝』は,各巻巻末に列国大事索引というのがついていて,各国に起った大事件を拾って読めるようになっており,事件の経過をしるのに便利である。また訳文がこなれており,古い翻訳にありがちなぎこちなさがないのも特徴である。ただし岩波文庫の『左氏伝』は特殊な解釈を施した部分も少なくない。余裕があるなら,竹内照夫氏の『春秋左氏伝』(平凡社。中国古典文学大系)をあわせて利用した方が無難である。

『史記』『左氏伝』ともの著名な本なので,原文+訓点の本も多数存在し,またいわゆる「書き下し文」もある。しかしそのようなもので内容が理解できる人は,この記事を読まないだろうから,ここでは触れないことにしたい。また岩波文庫『春秋左氏伝』の列国大事索引の試みは,本場中国でもむかしから試行錯誤がなされており。その最も有名なものが『左伝紀事本末』(『歴代紀事本末』所収)と『春秋大事表』(『清経解続編』所収)だが,これらはかなり専門的な本なので,推薦しない。

次回,最後。孔子の弟子とやや専門向けの本に論及する。

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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