スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

春秋権衡・左氏学派への批判(01-02)

杜預の序には〔『春秋』を解説して〕「仲尼は魯史の策書によって文を成し、その真偽を考え、その典礼を記し、上はもって周公の遺制に遵い、下はもって将来の法を明らかにす。その教の存するところ、文の害するところは、則ち刊して之を正し、もって勧戒を示し、その余はみな即ち旧史を用う。史に文質あり、辞に詳略あり、必ずしも改めざるなり」(*1)とあるが、まだまだ不十分な意見である。もし『春秋』が「文の害するところは、則ち刊して之を正し、もって勧戒を示し、その余はみな〔旧史に〕因りて改めぬ」程度のものなら、なぜ『春秋』が聖人の手に成ったことを貴ぶ必要があろう。また『伝』に「聖人でなければ『春秋』を修めることはできなかった」(成公十四年伝)と言わねばならぬ理由はどこにあったろう。(*2)

左氏はもともと『春秋』に込められた聖人の意図を完全には理解できていなかった。そのため『春秋』に散見する「同じ意味を異なる文章で表現する」ところに対しては、いずれも解釈の言葉を置かなかった。だから杜預は「左氏は『春秋』の本旨を正しく伝えていない」という批判をなんとか避けようとして、「これは旧史の文章をそのまま用いたのだ」と言い訳したのである(*3)。しかし丘明の意図は必ずしも杜預のいうとおりではない。例えば、隠公の元年に『春秋』は始まるが、このときの丘明の解釈は頗る慇懃である。──「段に鄢に克つ」に対して、『伝』は「出奔と言わざるは、これを難(はば)かればなり」と言い、また「郎に築く」を『春秋』に記さぬことに対して、『伝』は「公の命に非ざればなり」と言っている(*4)。たった一年の間に不書の例(*5)を七度も発しているのである。もし丘明の指摘する通りであれば、仲尼は『春秋』を修めたとき、大いに旧史を改作したことになるだろう。これでいて旧史の文章をそのまま用いたと言ってよいものだろうか。


(*1)杜預の序を要約したもの。左氏伝および杜預の文章は難解で、複数の解釈が可能な場合もある。したがって以下、劉敞の引用する左氏伝および杜預の注は書き下しのままとし、必要に応じて注中に意訳を載せる。ただし劉敞が大幅に意訳している場合は、その限りではない。本文杜預序の意はこうである。──仲尼は魯史の策書(辞令書)にもとづいて『春秋』の文章を作った。『春秋』は魯史の真偽を考察し、その優れた礼制を記録したものであり、それは上は周公の遺制に遵い、下は将来の法を明らかにしたものだった。そして教えのあるところ、文章に不都合のあるところは、文字を削って改訂し、人々に勧戒を示した。それ以外の文章はすべて魯史の旧文を用いた。魯史の旧文には雅なところもあれば木訥なところもあり、詳細な記述もあれば簡略なものもある。しかしそれらは必ずしも改めず、旧史のままを『春秋』に残した。

(*2)この前後、劉敞は言葉の端々に杜預の序の文句を引きつつ、逆に同序に批判を加えている。これは以下の文章にも言えることだが、いちいち指摘するのは煩瑣に過ぎ、またどれほどまで劉敞が意識したものか不明ゆえ、この種の指摘は省略する。

(*3)意を補って訳すと、「左氏はもともと『春秋』に込められた聖人の意図を完全には理解できていなかった。そのため『春秋』に散見する「同じ意味を異なる文章で表現する」ところに対しては、当然ながら聖人の筆法に対する解釈が期待されるにも関わらず、いずれも解釈の言葉を置かなかった。このようだから人々は左氏に対して、「左氏は『春秋』の本旨を正しく伝えていない。だから聖人の筆法があるはずのところに解釈がないのだ」という批判を投げかけたのだった。ところが杜預はなんとかこの種の批判を避けようとして、「これは旧史の文章をそのまま用いたのだ。だから聖人の筆法ではないのだ」と言い訳したのである」となる。

(*4)いずれも隠公元年の『左氏伝』をふまえたもの。以下、『左氏伝』をふまえた発言には注を付さず、その出処を記すのみに止める。

(*5)孔子は『春秋』を修める際、魯史(魯の旧史・国史)に記述に取捨を加えたが、その取捨の法則を指して不書の例という。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール

awatan

Author:awatan
HN:江藤清通
かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

自営サイト
最近の記事
カテゴリー
リンク集
全記事表示

全ての記事を表示する

FC2カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。