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宮地介直に與ふ(辛卯)

宮地介直に與ふ(辛卯)

重遠啓す。介直足下。去年、更師の命、京師の遊、時事雨雲、寒暑再易り、寂として一書を獲ず、鬱陶萬萬、馳情殊に劇し。昨夕忽ち聞す、疾を以て俸給を辭し、且つ更師の訴を陳べ、朝廷震怒し、命を下して遠鄙に禁錮するを。雷霆耳に在り、恐悚聲を呑む。北堂の憂苦、何を以て之を慰むるやを知らず。世に處ることの多難、吁、此に至るや。某や驚魂累年、之を招きて未だ鎭まらず。乍ち復た此の事を聞く。食するも咽に下らず、寝ぬるも睫を交へず、悵然大息、飲泣踧踖す。

竊に獨り惟念す。往歳戊寅、正明翁の竄謫せられて歸らず。丁亥、某や此の如し。今復た高明に逮ぶ。罪條各々殊なると雖も、我が學の大厄を為すは則ち同じ。謂ふ所の黨錮傳、何ぞ必ずしも讀まんや。然れども更師の命、事は非常に出ず。小學に言ふ、「君父と師と、一に死を致すを以て之に事ふ」と(*)。君父は天なり。臣子は地なり。君父、改むべからざるなり。師は其れ改むべけんや。某が高明に於ける、固より往來して聞く所を言ふの輩行のみ。豈に之を師と謂はんや。然れども之を指して「舊師なれば更ふべし」と為せば、則ち分義、焉に繫る。噫、此の命の下る、我が學の否塞極まれり。此の若く一刀兩斷するに非ざるよりは、竟に好出場無し。題目髓腦を布施すと雖も、尚復た何をか論ぜん。今般の舉、差ゝ人意を強うすと謂ふべし。甚慰甚慰。
(*)正確には「欒共子曰、民生於三。事之如一。父生之、師之、君食之。非父不生、非食不長、非不知。生之族也。故壹事之、唯其所在則致死焉。報生以死、報賜以力。人之道也」(小學明倫)

大丈夫の天地のに生まるる、直に須く立身をば分明にし、死生之を以てすべし。豈に含糊摸稜(*)、學ぶ所に辜負(*)し、憒憒乎(*)として是の六尺の軀を保たんや。高明久しく書信を絶つ。蓋し訴陳の志、胸懷に留在し、重ねて賤迹(*)に傳染するを恐るればなり。此の意甚だ厚し。向來、賢慮を悉さず、猜疑多端、淺薄の愧、何を以て之を謝せん。多罪多罪。
(*)しのごの言い訳して態度をはっきりしない様。
(*)所信に背くこと。
(*)凡庸で態度をはっきりしない様。
(*)自身の謙称。

此の、昨の如し。遠念(*)を勞せず。禁錮五年、一室に塊坐し、左經右史、俯讀仰思、蓋し一生の優閑を得。然れども講學體驗の功、分寸も進むるを加へず、氣習卑陋、工夫生硬、眞に天地のの一蠧と為れり。不審、高明、何を以て之を教へん。因て念ふ、某と高明と、書を講ずること幾ど二十年。經傳を談論すること徧ねからずに非ずと雖も、或は稠人説書(*)の冗に發し、或は杯酒詼諧の機に出で、年少輕脱、磨練未だ至らず、懇惻憤悱(*)の氣象に非ず。今に至るまで書を讀むも味少なく、進脩も力乏し。此れ高明と某と、蓋し同一の病なり。今や各々一方に屛居し、門を出ずると人に接するとを許されず。此れ天の講學の暇を予二人に賜ふなり。豈に幸甚ならざるや。
(*)遠方の人に対する想い。
(*)稠人は衆人に同じ。説書は論評のこと。
(*)「子曰、不憤不啓、不悱不發。舉一隅不以三隅反、則不復也」(論語述而)。朱注に曰く、「憤者、心求通而未得之意。悱者、口欲言而未能之貌」。

只だ願はくは、須く急ぎ小學の書に從ふを首と為し、次に四書、次に近思、次に五經と夫の濂洛關閩の遺言、垂加・絅齋の發揮と、一一細看し、件件剔出し、先賢の已に言ふ所を熟復し、前人の未だ言はざる所を發明し、寢食起居の微、妙道義の祕、得る所、疑ふ所、悉く筆して以て寄せらるべし。某、衰惰すること年久しく、道ふに足る者無し。然れども高明果たして此に志有らば、駑鈍を策し(*)、考究切劘(*)せば、某も亦た豈に黽勉(*)せざらんや。天下の靈に頼り、萬一相與に生順死寧(*)の髣髴に庶幾せんや。陽復困亨の吉(*)、孰れか此より大ならん。伏して冀はくは、高明、勉㫋(*)せよ。
(*)「愚鈍を勉励し」の意。
(*)切劘は切磋琢磨の意。
(*)努力の謂。
(*)「子曰、朝聞道、夕死可矣」(論語里仁)の朱注に曰く、「道者、事物當然之理。苟得聞之、則生順死安、無復遺恨矣」。
(*)困窮の極より快方に向かうの意。
(*)努力の謂。

書疏往來の計、密ならざれば害生ず。然れども故舊林立すれば、豈に一人の義士無からんや。固より多言を煩はさざるなり。若夫れ稷下甘陵の覆轍は、先賢之を戒むること具備す。而して抑鬱無聊(*)の歎は、唐賢、道を聞かざるの愆(*)なり。今又何ぞ尤效(*)すべけんや。他は眠食自珍(*)し、以て交友の遠望に副へよ。重遠再拜。
(*)煩悶の意。
(*)過誤の意。
(*)模倣の意。
(*)自愛の意。


最後の段落に出てくる「稷下甘陵の覆轍」と「唐賢」は何を指すのかよく分からない。言われれば思い出すかもしれず、全く知らないかもしれず、なんとも。

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かつては春秋学・宋代史・南学(秦山関係)関係の記事を中心に書いていました。最近は開店休業状態で、数ヶ月おきに思いついたことを書いてます。

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